この授業書のねらいは，「明るいところにあるものは，（太陽や電球やローソクと同じように）光をだしているのだ」ということに気づかせることにあります。それとともに，虫めがねや凹面鏡の不思議な性質に親しませることにあります。

この授業書は，光の直進だとか，反射・屈折などの法則については，直接なにも言及していません。これらの法則を教えるときには，ふつう強い光のビーム（光線）を使います。強い光のビームが直進したり，反射したり，屈折したりすることを示して，「光というものはこういう性質があるのだ」と教えこむわけです。しかし，強いビームの実験をしたからといって，それで一般の光の性質がわかるでしょうか。「強い光のビームはたしかにそのように進むだろう。しかし，ふつうのるい部屋に充満しているように見える光は，ただ充満しているだけで，光のビームのように直進したり，反射．屈折したりするようには見えないのではないか」というわけです。

つまり，光の問題をすべて強い光のビームの性質になぞらえて考えることは，常識的に言ってなかなか納得できることではないのです。

この授業書の主役は，虫めがね（凸レンズ）と凹面鏡です。これらを使って「普通の景色からも，太陽やランプと同じように光が来ている」ということを知らせようというのです。

この授業書の特色は，〈虫めがねによって太場光線を集める実験〉と〈カメラによって景色を集める実験〉とを一連の実験によって統一的につかめるようにしたことにあります。

第１部「虫めがねで光を集める」は，〈虫めがねを使って太陽光を集め，ものを燃やす〉という簡単なたのしい実験から，〈虫めがねで景色からの光を集めて紙にうつす〉実験までも取り上げています。そして，小学生にも簡単に作ることのできるカメラを使っています。この第 1部だけでもやることによって，光についての重要な事柄を理解できます。

第２部は，凸レンズを使った器具の話と，凸レンズに関係する問題です。

第３部では，凹面鏡をとりあげます。凹面鏡は凸レンズと同じように，光を集めて像をうつすことができるので，この第 3部は「第 1部のつづき」ということになります。ですから第 2部を飛ばしてすぐに第 3部をやってもかまいません。行う，いろいろなたのしい実験がでてきます。

使用学年のことなど

「この授業書の前にはどんな授業をやっておく必要があるか」というと，何も必要ないと思います。光に関連した授業書としては．すでに〈かげと光〉という授業書ができていますが．それをやっていなければいけないということはありません。そこで，小学校３〜４年くらいから，大学生，先生，社会人まで楽しめます。大学生でも．はじめからわかりきっているとはいえないからです。

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【2025年デジタル版での変更】（編集主体阿部徳昭，アップデート研究室）
①横版２段組レイアウト変更
②図版のカラー化ならびに追加・虫めがね月写真ならびに動画は坂井美晃さん，西山宜孝さん（千葉）・５円玉レンズ写真，カメラオブスキュラの部屋の図，色紙が色を反射する写真，は林秀明さん（北海道）
③写真撮影は，削除。感光紙が入手できないため。
④虫めがねで月の光を集める結果写真を追加。予想を宿題にしたい場合は，このページを飛ばして進めれば良いでしょう。
⑤ピンホールカメラの結果写真を追加。
 ⑥「幻燈機の話」を「映画やプロジェクターのしくみ」として差し替え。アナログのスライドプロジェクターは見られなくなったため。
⑦大きくして見るレンズの結果写真を追加。
⑧太陽炉を東北大学からフランスの太陽炉に変更。東北大学の太陽炉がなくなってしばらくたち，現存も稼働する太陽炉がフランスにあるため。
⑨望遠鏡の写真を追加。